関内の大通公園沿い。官庁街の喧騒を癒やす老舗の暖簾「おおぎ」
関内駅から、ハマのディープスポット伊勢佐木長者町方面へ。大通公園の「石の広場」のすぐ脇に、時代に取り残されたような……いや、あえて時代を拒んでいるかのような、昔ながらの佇まいを残すうどん・そばのお店があります。その名は「おおぎ
蓬莱町店」。どうも、最近はキラキラした最新ショップよりも、こういう枯れた味わいの店に吸い寄せられがちな30代男子、なおやんです。

かつてこの界隈には横浜市役所があり、昼時ともなれば、パリッとしたスーツ姿の公務員たちが「今日のランチはどうする?」なんて言いながら、こぞってこの暖簾をくぐっていました。現在は市役所も北仲エリアへと移転し、周囲の風景も少しずつ変わってきましたが、この「おおぎ」の店内だけは、一歩足を踏み入れれば昭和の官庁街の空気がそのまま真空パックされているような、不思議な安心感があるんですよね。
ホールをテキパキと切り盛りするお母さんの、飾らない(良くいえば親しみやすい、悪くいえば適度にぶっきらぼうな
笑)接客も、昭和の食堂らしくて最高っすね。「いらっしゃい!」という威勢の良い声を聞くと、なんだか「あぁ、今日も仕事頑張ったな(まだ昼だけど)」と、実家に帰ってきたかのような安堵感に包まれます。
昼下がりの社交場。元・常連たちが紡ぐ「蕎麦屋酒」の粋
最近、このお店を訪れてふと気づいたことがあります。それは、お昼のピークを過ぎた午後2時や3時といった、普通のサラリーマンならデスクで死んだ目をして(?)働いている時間帯。そんな時間でも、おおぎには意外とお客さんが入っているんです。

そして驚くべきは、その多くが、蕎麦をすする前に瓶ビールや焼酎のグラスを静かに傾けていること。おそらく、現役時代はこの官庁街でバリバリ働いていたであろう、元・常連のお父さんたち。定年退職して、散歩がてらに思い出のこの店に寄り、一人、あるいは昔の仲間と「蕎麦屋酒」を楽しんでいる……。常磐町や相生町にある支店もそうですが、この「おおぎ」という場所は、単なる胃袋を満たす場所ではなく、地元の男たちの数十年分の記憶が染み込んだ社交場としての側面が、年々強くなっている気がします。陽だまりの中でゆっくりと酒を嗜む、なんとも羨ましい老後のワンシーンじゃないですか。
【実食報告】名物「鴨せいろ」の誘惑を断ち切り、独特の「鶏天」に挑む!
さて、おおぎといえば一番の人気メニューは、不動の「鴨せいろ」です。ここのうどん、実は讃岐うどんのようなゴリゴリのコシがあるタイプじゃなくて、秋田の稲庭うどんを彷彿とさせる、細めでツルッとした喉越しの良いタイプ。これが、鴨の脂が溶け出したアツアツの濃口汁に絶妙に絡んで、中毒性がすごいんです。
でも、今回僕がご紹介したいのは、密かにファンの多いボリューム満点メニュー「鶏天せいろうどん」です!

まず驚くのが、その提供スタイル。一般的な「鶏天うどん」って、どんぶりの上にドーンと鶏天が乗っていることが多いですが、おおぎは違います。うどんと鶏天が、まるで別々の主役であるかのように別皿で提供されるんです。これ、唐揚げ定食のメインディッシュをうどんに替えたみたいな、なかなかの迫力っすよ。
そして最大の特徴が、注文時に「タレ」を選べること。甘辛い醤油ダレか、サッパリとした塩ダレか。これ、単なる味付けの選択じゃなくて、揚げたての鶏天をタレの入った小鉢に「ドボン!」と豪快に浸して提供されるスタイルなんです。衣にしっかりとタレが染み込み、噛めばジュワッと肉汁とタレのハーモニーが溢れ出す。うどんの合間に頬張るもよし、もし午後休だったら(笑)、迷わずビールのアテにしたくなるような、強力なパンチ力を秘めています。
うどんのつけ汁には、ぶつ切りのネギがこれでもかというほどたっぷりと入っています。ベースの出汁は、関東風にしてはカドのないまろやかで優しい味わい。そこにタレの染み込んだ鶏天を少しずつ落とし、油のコクをスープに移しながら食べ進めると、味がグラデーション的に深くなっていくんですよ。これこそ、おおぎを知り尽くした大人の楽しみ方かもしれません。
まとめ:変わらない「普通」の良さが、関内の街には必要だ
最近の横浜は、どんどんお洒落になり、洗練された高級店や行列のできる有名店も増えました。もちろんそれも素晴らしいですが、僕ら世代が、ふとした瞬間に本当に帰りたくなるのは、こういう「気取らない、でも確実な味」を守り続けているお店なんじゃないかなと思います。
ツルツルと喉を通り抜ける細うどんの感触、そしてホールを仕切るお母さんの絶妙な距離感の接客。関内の官庁街で長年、働く人々(そして優雅に酒を楽しむ人生の先輩たち)の胃袋を支えてきた「おおぎ」は、今も変わらず、そこにあります。もしあなたが、都会のスピード感に少し疲れ、実家の食卓のような温もりを求めているなら。蓬莱町の交差点を曲がって、この藍色の暖簾をくぐってみてください。一口食べれば、きっと心が「リセット」されるはずっすよ!次は僕も、鴨せいろを……いや、やっぱりあの鶏天の別皿スタイルが恋しくなるんだろうなぁ(笑)。それじゃ、また次の横浜ディープグルメでお会いしましょう!


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